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2022/07/15

Amazonと楽天の違い:2社比較編

これからECショップを始めるとなった際、ECモールを利用することは有効な手段の一つです。今回は、数あるECモールの中でも特に有名な「Amazon」と「楽天市場」について比較していく企画となっています。

前編、中編では、Amazonと楽天市場の基礎的な特徴を解説してまいりました。最終回となる後編では、Amazonと楽天市場を比較し、その違いを考察してまいります。

比較内容

今回は、以下のテーマを基に比較、考察していきたいと思います。

・出品/出店者数
・確定している固定コスト
・提供するフルフィルメントサービス
・配送業者/サービス

出品/出店者数について:競合他社が比較的少ないのは楽天

出品/出店者数では、Amazonの方が多いです。出品/出店者が多ければ多いほど競合他社が増える可能性が多く、その点で見れば楽天市場の方に軍配があがります。Amazonは2021年での最新データは公表していないものの、2020年度の中小規模の販売事業者様が約16万社になったと発表しています。それに対し、楽天が現在公表している出店店舗数は55,939社です。全くもって同時期のデータではない点に留意する必要はありますが、それでもトリプルスコア以上の結果となっています。この理由として、楽天の出店審査にあると考えられます。楽天市場では、出店する際、「①個人事業主ではなく副業で出店していないか」や「禁止商材を取り扱っていないか」等の事前審査があります。Amazonでも出品カテゴリ毎に出品審査がありますが、個人での副業でも販売出来る点等、楽天市場よりも少しルールが甘いようです。

確定している固定コスト:出品コストではAmazonに軍配が上がるか

出品/出店にかかる基本コストはAmazon の方がお得です。Amazonでは出品形態に応じて出品手数料が変わりますが、基本的に『出品手数料最大4,900円+販売手数料』となっています。この販売手数料は商品1点購入に当たり、商品カテゴリ毎に設定された割合で発生する形になっています。カテゴリ毎に差異はありますが、平均12%程度の手数料が発生します。

その一方、楽天では最低で月額19,500円、最高で月額100,000円がかかります。そこに加えて、RMS利用料やシステム利用料が発生します。Amazonの販売手数料にあたるシステム利用料では、売上全体に対して3.5~7.5%程度のシステム利用料が発生し、そこに更に費用が発生してくるような状況です。システム利用料では楽天市場の方がお得ではありますが、月額利用料で大きなディスアドバンテージがあります。

利用料金で見れば、Amazonでの利用を検討した方が良いでしょう。

提供するフルフィルメントサービス:同モール内出品の場合、サービス内容ではFBAに軍配があがるが…

フルフィルメントサービスで比較すれば、Amazonに軍配があがります。フルフィルメントサービスとは、注文受付から在庫管理、配送に至るまでを一括して代行するサービスのことを指し、Amazonでは『フルフィルメント by Amazon(FBA)』を、楽天では『楽天スーパーロジスティクス(RSL)』というサービスを提供しています。両社の共通点として、①物流業務を一括で代行できること、②他ECモールでの注文にもある程度対応できること、③販促品等の同梱物対応等のカスタマイズが出来ないこと等にあります。それぞれの強みとして、FBAでは配送スピードの高さやカスタマーサポート・返品対応がついている点、primeマークが付与できる点なのに対し、RSLでは他モール出荷でも同一料金で対応してくれる点や15時までの注文で即日出荷してくれる点です。FBAでも「マルチチャネルFBA」というサービスで他モールの注文にも対応していますが、別途料金での対応となりRSLと比べ割高になってしまいます。

ここで注目したいのは、『カスタマーサポートや返品処理に対応してくれるかどうか』です。ECの世界では、実物を見ずに商品を購入するため「思っていたものと違った…」とエンドユーザー様からの返品やクレームへ対応しなければならない場合があります。AmazonではFBAで配送した場合、カスタマーサポートによる返品対応やクレーム対応を代行してもらえます。このサービスはRSLにはなく、キャンセル対応にも追加費用が発生します。特にAmazon配送の現場では、思ったよりも多くのキャンセル品が出ることもあり、こちらに対応してもらえるのは大きなアドバンテージです。

ただ、どちらのサービスにも同梱発送などの対応力・カスタマイズに弱い欠点があります。販促品等を同梱発送したい・流通加工を求める事業者様は、弊社のようなFBA納品代行サービスやRSL納品代行サービスを提供している物流業者を利用すると良いでしょう。FBAやRSL、それらの代行業者については、別枠で投稿予定です。

配送業者/配送サービス

こちらはどういう点で比較するか難しいところですが、『配送速度で見ればAmazon、配送サービスで見れば楽天』と言えるでしょう。Amazonでは、『デリバリーサービスプロバイダ(DSP)』と呼ばれる配送業者によるネットワークを構築しています。そのドライバー達に対し、自社開発したアプリを使用させて配送しています。このアプリの利便性が高く、今まで地図アプリに一つ一つ手入力でお届け先を入力していた状況にイノベーションを巻き起こしました。更に、Amazonが2020年から「置き配」を初期設定としており、その両輪による飛躍的な配送効率の向上を実現しています。その配送効率は、今までに比べて1.5~3倍以上だともいわれています。この配送速度で見ると、Amazonの方が優勢です。

一方、楽天の強みとして、「フルフィルメントサービスを利用しなくても、楽天が提供する宅配ボックスやコンビニ受取が出来る」点になります。以前と比べて「置き配」についてかなり肯定的な世の中にはなってきましたが、やはりまだまだ「玄関置き配は怖いから宅配ボックスやコンビニで受け取りたい…」という声を耳にします。実際の配送現場でも、エンドユーザー様のうちの3~4割程度は宅配ボックスやコンビニへの配送を希望されています。Amazonでは、「Amazon Hub」というロッカー配送やコンビニ受取のサービスを展開していますが、これはFBA経由でないと利用できません。一方、楽天では日本郵政と提携して「はこポス」という宅配ボックスお届けサービスやコンビニ受取サービスを展開していますが、「Amazon Hub」と違ってRSLを利用しなくても「はこポス」を利用することが出来ます。

宅配ボックスお届けを希望するエンドユーザー様をターゲットとしているけどフルフィルメントサービスまでは利用したくない事業者様は、楽天を利用するメリットがあるといえるでしょう。

それぞれのサービスの特徴を理解し、適切なサービスを選びましょう

弊社HPがリニューアルオープンしてから初回投稿となる今回では、全3編に渡り「Amazonと楽天の比較」についてまとめてきました。この二つのECモールは同時期に日本に誕生し、それ以来EC市場をけん引してきた立役者です。両社ともに、月額料金やサイトレイアウト自由度、配送サービス等に違いがあり、それぞれに良さがあります。今回は、フルフィルメントサービスと配送業者/サービスの2点を重点的に見ながら解説しました。

「固定コストを比較的抑えたい、早くエンドユーザーに配送してほしい、返品対応等も丸ごと対応してほしい」場合はAmazonを、「競合他社がなるべく少ない場所で戦いたい、他モールでも同じ価格で配送してほしい、フルフィルメントサービスを利用せずともモール側が提供する宅配ボックスを使いたい」といった場合は楽天で販売すると良いでしょう。

上記を踏まえ最終的には、どちらのECモール/フルフィルメントサービスでも出来ること、片方しか出来ないこと、両社とも出来ないことをしっかりと見極め、ご自身がエンドユーザー様へ提供したい付加価値と照らし合わせながら利用するサービスを選択することが重要です。

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